2021-01-05 河井酔茗傑作詩篇 3 薄暮 薄くらき畳の上に 落としたる簪白薔薇 黄昏を拾ひもささで 吾思ひ、衿に埋む うづくまるならひとなりて 古き柱、人になづきぬ。 知らず、吾亂るる袖を ほの白き手に押へたり。 幻覺を胸に映して 吾想ふ世こそ描け、 待たばとて徒らなるを 少女の身、朽ちむは惜しき。 行く水に影逐ふよりも 吾岸の小草に醉はむ 吾肩に人、手を下し 撻たば靜かに避けむ。 堪へかねし白日の愁も つり忍草靜かに暮れて ゆふべゆふべ眠らぬ夢の うすやみに燭火なつけそ。