酔茗傑作選7

火の色

 

 

深海の底に沈める

室の氣は重げに落ちぬ

微なる人の寢息は

おぼめきぬ。

 

花のランプ

宵のままかがやき燃ゆれ

油吸ふ力をこめて

またたくや火の葉はあへぐ。

 

今、外は暁闇の

星宮に残れる光

うすれゆく眼路の極みに

見うしなふ。

 

薄ら明

光こそ地には下りざれ

室はなほ夜のさまして

窓惟の隙こそ見えね。

 

乾きたる炎の衰弱

終夜倦み疲れし色の

蒼白く燈火やつる

夜明前。