新體詩人に会いに行く4

 河井夫妻(河井酔茗と島本久恵)のご次男の島本徹氏は詩人でわたしが持っている詩集は、今ない「塔影詩社」から1978年に100部限定で出版された『時禱書の秋』。(この詩集については、別の機会に書く。)

 時間は進む。平成13年に堺市の図書館で河井夫妻の展示(詳細は知らない)があって、この時記念の講演会でご子息が講演を行っている。仕事始めになったら、問い合わせして、この講演録を手にして読んで見たいと思っている。河井酔茗の遺稿を『千里横行』という詩集にして出したのもこの島本融氏。

 タイトルとなった詩篇の第一連をあげる。

     秋晴れて草木黄落(きばみお)つる日に

     わが足を痛めたり

     畳に杖ついて

     野越え、山越え

     行かんとするに足すくみ

     さはれば落る山茶花

     もろきが如し

詩人は幾多の時間を経て今、杖をたよる老骨の身となり「さわれば落ちるもろき山茶花の花一輪」と弱気に見せてはいるが、この微小の世界に神羅万象あり、畳の上、狭き室内にあって、時間のすべてを逆にさえ辿りながら、今なお青年の体躯と精神で野を越え、山も越えつつあるのだ。